辻斬り
「出来っこないヨなあ――」
赤田が不意に現れると、鴻上のほうへ向かってくる。
「赤田ぁ」
槍を抱え憎々しげに呟いた。
「お前を見ていてつくづく分かったよ。果たさねばならない恨みはやっぱりあるってな」
刺すべき相手は、この男だ。
「いいか、因果は被るものじゃない。生み出されるものだ」
鴻上は重く、そして強く歩む。
「呪イは伝染してイる。俺はあ、神になった気分だあ」
その背後には、先ほど死んだ紀伊やめぐみやまなみ、えみの姿が見えた。みんな霧に覆われその合間に見える表情は獲物を見つけて喜びにうめいている。
「俺を捕まえるのにぃ警察はぁずいぶん手ぇ焼いたらしい。俺ぁ痛快だったよぉ。馬鹿にしまくってさぁあ。頭の悪―い人間は良いよなぁ。どんな事ぁされてもぉ同じよおぉにうろたえて、何とかしよおぉと頑張るんだからなぁ。どうしようもないのにさ」
赤田の口調がまともになる。
悪意が同調したのか、周りもきゃきゃきゃきゃ……と笑う。
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