辻斬り
だが、そこでがちっとした、生きた感触を得た。
――いったい何?
もう救われるわけがないと決め込んでいたあゆみの手を引っ張ったのは、大熊だった。
「一人で逃げたり出来ない。怖いんだ、一緒に逃げてくれ」
理由が何であれ、あゆみははじめて笑った。
そう、生きるということは、笑って死ぬための布石だ。
鴻上はそれを見届けると一瞬安堵の顔を浮かべた。そして赤田に言う。
「――俺は、魂をなくしたくない」
「なぁあぜぇだぁ?」
「俺は、人の痛みを分かりたい、人間だからだ」
「ほざぁけよぉ」
霧にまかれた全員の意思だった。
その中に、灘と戎徒がいないことが(戎徒のことを鴻上は知らないとはいえ)自分の意思の正義を奮い立たせる。
――いったい何?
もう救われるわけがないと決め込んでいたあゆみの手を引っ張ったのは、大熊だった。
「一人で逃げたり出来ない。怖いんだ、一緒に逃げてくれ」
理由が何であれ、あゆみははじめて笑った。
そう、生きるということは、笑って死ぬための布石だ。
鴻上はそれを見届けると一瞬安堵の顔を浮かべた。そして赤田に言う。
「――俺は、魂をなくしたくない」
「なぁあぜぇだぁ?」
「俺は、人の痛みを分かりたい、人間だからだ」
「ほざぁけよぉ」
霧にまかれた全員の意思だった。
その中に、灘と戎徒がいないことが(戎徒のことを鴻上は知らないとはいえ)自分の意思の正義を奮い立たせる。