辻斬り
雨は今までの惨劇をすべて押し流すように、とめどなく降った。
鴻上は立ち尽くしたまま雨を受け止めた。
背負っていたものをたった一つ、洗い流すために。
残りの重荷が、少しでもきれいなものになるよう願いながら。
霧が消え、雨もやんで空に陽が差し込もうとする。時計は午前六時を誘う。
すると光の胞子が鴻上の周囲に広がる。
「ゆり、なのか?」
胞子は小さく揺らめいた。
霧は速やかに晴れていき、光の胞子はゆっくりと何かに形為す。
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