辻斬り
間髪いれずに紀伊が今回の目的を告げる。

「数十年前、ここで原因不明の集団突然死事件があった。原因究明に動こうとしたが無医村だったこの村は医者や警察がたどり着く前に死体をすべて「供養だ」と言って燃やした。さらに県が敷いた緘口令のおかげで誰に聞いても、ろくな原因は解明できず、そのまま事件はうやむやになり、村は閉じた。立山先生は今回それの原因究明をしたいといった。そこのおっさんもまじえてな」

灘は後に続いて言った。

「俺はそのころにはとっくに村を後にしていた。ここに残した親父から書簡を通じてそれを知った。親父は最後までおびえていたよ。この村の因習が、惨劇を生んだんだってな」
「…因習?」

灘は森の静寂を逆立てぬよう、静かに、静かに話し始めた。
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