添い寝執事
慌てて離れようとするものの……
要の大きな腕の中に身体はすっぽり包まれてしまっていて、抜け出すにも抜け出せない。
「怖いなら、このままでもいいだろう? 俺がいるんだし」
そんなことを耳元で囁かれる。
長細い綺麗な指先で撫でられる頬。
「ん……っ」
要の一挙一動にドキドキしてしまう。
ああ…
心臓がパンクしそう。
「ドキドキしすぎですよ? お嬢様」
にっと意地悪な笑顔。
いつもより近くにある要の顔。
少し切れ長なんだけど優しい目。
通るような鼻筋。
意地悪そうに孤を描く少し大きな口元。
「か、要が…悪いのよ」
パキッと何かが折れたような音がした。
あぁ……
きっとあたしの理性が壊れた音だ。
ふっとそう思った。
「俺が? 何故?」
返す言葉が見つからない。