貸し恋彼氏〜カシコイカレシ〜



無我夢中で追い付こうと必死に歩いていたのだが……


ドンッ



「いたっ…。」


急に止まった江緑君の背中にぶつかってしまった。


「どう…したんですか…?」



あたしが聞いているのに何も言わない。


ただ、振り返って、あたしの方を見るだけ。



「あの…」


なんか…変なことしちゃったかな…?



そう考えていたのだが、江緑君が動いた。


前に進んで帰ろうとしていたわけじゃない。


あたしの隣に来たのだ。



「お前、息切れてんぞ。なまりが。」


なまり…


この人…本当に酷いわ…。


「まぁ、俺も悪かった。先に進んで行って。」



「えっ…?」


今…何て…?


悪かったって言ったよね?

この人も謝る事、できるじゃん!


「……江緑君。」


「あ?」


「悪魔でも大丈夫だね。」

あたしは笑って言ったのだけれど


あたしの言葉に首を傾げるだけ。


でも…ちょっとだけ見えたんだ。



クスッと笑っている江緑君を…。








< 36 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop