貸し恋彼氏〜カシコイカレシ〜
無我夢中で追い付こうと必死に歩いていたのだが……
ドンッ
「いたっ…。」
急に止まった江緑君の背中にぶつかってしまった。
「どう…したんですか…?」
あたしが聞いているのに何も言わない。
ただ、振り返って、あたしの方を見るだけ。
「あの…」
なんか…変なことしちゃったかな…?
そう考えていたのだが、江緑君が動いた。
前に進んで帰ろうとしていたわけじゃない。
あたしの隣に来たのだ。
「お前、息切れてんぞ。なまりが。」
なまり…
この人…本当に酷いわ…。
「まぁ、俺も悪かった。先に進んで行って。」
「えっ…?」
今…何て…?
悪かったって言ったよね?
この人も謝る事、できるじゃん!
「……江緑君。」
「あ?」
「悪魔でも大丈夫だね。」
あたしは笑って言ったのだけれど
あたしの言葉に首を傾げるだけ。
でも…ちょっとだけ見えたんだ。
クスッと笑っている江緑君を…。