人魚姫の嘘


「王子!」


ナンシーが王子を呼んだ
王子はさっき居た
男性と話をしていたが


「…………おっどろいた」




目を丸くして
私の瞳をジッと見てくる



「…綺麗だよ」



そんな言葉を言われたら
赤くなるしかない。



下を向いてしまう



「ほらほら
下を向かないで
そうだ、まだ君の名前を知らないな
教えてくれよ」



《でも声が…》


自分の喉を手で触れる



「そうだった…
あ!良い考えが!
ポール何か書くものを」



「かしこまりました王子」



ポールと呼ばれた
男性は大広間から出て
すぐに戻ってきた


手には羽ペンと紙


「ありがとうポール」



どういたしまして、と
言うとポールは
私に羽ペンと紙を渡した



「君の名前を
ここに書いてくれ」



王子が言う



………そうだ



声が出なくても
想いを伝える方法はある



《リース》



と…それだけ書いて
王子に渡した



「リース…。リースか!」



コクりと頷く



……伝わる……



…これなら…



私の中に希望が生まれた



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