人魚姫の嘘


外へ行っても
危険なだけ
でも行くあてがないんだ


「おい。アレ見ろよ
そこの家の子だろ?
汚ねぇっ!」


「だってあの家
貧乏だしアハハっ!
可哀想ー」


言うな。


可哀想なんて




…言うな。



「…ヒッ…ヒック…ヒッ…」



泣くことしか
出来なかった



空腹で動けなかったから



残す体力で
あたしは泣き続けた



ぽん…



衰弱しているあたしの前に
パンが置かれた


視界がボヤけて
誰か分からない


でも男の人だとは分かった


「…もし君が来たいのなら
いつでも教会へおいで」




それだけを言い残し。




「………きょぅ、かぃ…?」




男の人が去っていくのを
見るとあたしは
パンを食べた



また涙が出て
一口一口味わって食べた





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