人魚姫の嘘
降りていくと
朝なのに賑やかな街並み
1つの太い道には
沢山の屋台と人たち
果物や野菜を売る人
魚を売る人、肉を売る人
パンを売る人
皆の目が幸せに満ちているのが解る
あたしはそれを
胸が高鳴るのを抑えて見てた
あたしも、こんな街に
生まれたかった
なんて…下を向いていると
「どうしたの?迷子?」
顔にしわのある
優しい目をした人が
話しかけてきた
「ううん…違う」
国を飛び出したなんて
どう思われるか怖くて
言えない
「お腹空いてない?
良かったら食べにおいで」
あたしに差し出された
女性なのにたくましい手は
彼女の人柄を移す、そのものだと
思った…
手を差し出されたのは
これで2度
1度は振り払われたけど
今この手を振り払ったら
あたしは生きていけない…と
心の何処かで思ったんだ…
「行こうか!」
あたしを包む
優しい手の温もりに
胸が締め付けられた