ただ君だけを想う。
「あれ、あんま驚いてない…?」


「馬っ鹿…!」


「えぇ、何でよ?!」


「その話はしたらダメでしょ!」


そんな二人のやり取りを止めることも出来ず。


でも、


「ほんとだったんだ…」


それだけは声を発することが出来た。


「海音…?」


茜の心配そうな呼び掛けには何も答えず、
ただ聞きたかったことを理央に聞いてみることにした。


「理央…、愁ちゃんは、」


“何て答えたの…?”


そう質問しようとしたけど、また遮られてしまった。


『海音…、』


だけど今回話を遮ったのは、なんと、噂の張本人。


愁ちゃんだった。



「愁ちゃ…ん、」


『ちょっと今いいか…?』


「うん…」


『じゃあ付いて来て』


そう言って愁ちゃんは私に背を向けて歩き出していた。


「ちょっと行って来るね」


「大丈夫、海音?」


茜のその問いに答えることはしなかったけど、コクンとだけ頷いておいた。


そして私も、愁ちゃんの後をゆっくり追った。


もう前みたいに冗談を言い合ったり、笑顔は、ない。


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