勇者様と従者さま。
 アーサーは駆け出す。

 走りながら長剣を抜き放った。

 鋼のように固い毛におおわれた魔物の体を見て、顔をしかめる。

 このての魔物は体毛に遮られて剣が届かないのだ。

 魔物もアーサーを獲物と認識したようで、前肢を振りまわす。

 動きは速くないが、鋭い爪の破壊力は高そうだ。

「矢を放て!」

 叫びに応じて、弓兵たちが矢を放つ。

 もちろん、その矢は魔物の体毛に跳ね返された。

 しかし、一瞬でも魔物の注意はアーサーから逸れた。

 それで充分だった。

 矢をかいくぐって、アーサーは魔物の目前に踊り出る。

 魔物が気付いた時には手遅れだった。

 アーサーの剣が、唯一魔物の体毛に遮られない部分…口内に深々と突き立てられた。

 痛みと怒りに魔物が暴れ出す。

 その瞬間、アーサーは剣を抜き、勢いを利用して距離をとった。


 魔物はのたうちまわりながらも逃げ出す。

 …恐らく、消滅は時間の問題だろう。

 念のため、追うように指示を飛ばした。

< 15 / 93 >

この作品をシェア

pagetop