勇者様と従者さま。
 入ってみると、それは不思議な村だった。

 村というより集落といったほうが良さそうなくらい小さいが、中央には王都にあるような立派な聖堂がそびえている。

 そして、結界でも張っているのか、聖堂のまわりだけは被害がなかった。

 ふと、エヴァの視界の片隅を通り過ぎた影があった。

 思わず目で追う。

 小柄で、まだ子供のようだ。

 白い服に、髪は銀だろうか?とにかく真っ白な見た目は、荒廃した村から妙に浮いていた。


「…様!エヴァ様!」

 ぼんやりと影を目で追っていたエヴァは、呼ばれていることに気付いて飛び上がる。

「は、はいっ!なんですか?」

 案の定アーサーは呆れ顔だ。

「やっぱり聞いてなかったのか。とりあえず無事らしい聖堂に向かうぞ」

「あ、はい、わかりました」

 答えつつ、エヴァはちらっと振り返る。


 あの白い子供はもういなかった。

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