勇者様と従者さま。
 エヴァとアーサーは聖堂に足を踏み入れた。

 突然大人数で押しかけるのも考えものなので、討伐隊の面々は外に残してある。


「ひろい。…綺麗」

 エヴァのいうとおり、聖堂の中は外見以上に広々として、各所に精緻な細工が施されている。

 しかし、もとからなのか、村が荒れたせいか、どこかどんよりした雰囲気が漂っていた。


「…いいか、勇者らしくしていろよ」

 アーサーがすでに何回目かの注意をする。

「大丈夫ですよー、喋らないで偉そうにしてればいいんでしょう?」

 エヴァも何回目かの同じ返事。


「…どなたかな」

 突然、声がかけられた。

「ひぎゃあ!」

 エヴァは文字通り飛び上がってアーサーの後ろに隠れる。

 アーサーはといえば警戒しながらも動じていない。


 奥の暗がりから現れたのは、初老の男性だった。

 簡素な司祭服を着ているので、恐らくこの聖堂の責任者だろう。

 声の正体がわかり、エヴァが力を抜く。

 それからやっと先程の注意を思い出し、胸を張って威厳を取り繕おうとした。

 そんな彼女をよそに、アーサーは男性に礼をして話し出す。


「…突然失礼いたしました。私はアーサー=ゴールドスミスと申します。こちらは今期の勇者、エヴァ。私は彼女の従者です」

「これはこれは…お噂は伺っておりました。わたくしはこの聖堂の司祭で、ステファンと申します」


 アーサーは、ここまでの経緯をかいつまんで説明する。

 魔物を追っていてこの村にたどり着いたこと、魔物は滅したこと、魔王を探しているのでもし何か知っていれば情報がほしいこと…

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