勇者様と従者さま。
「…エヴァ様!」

 後ろから声がかかり、エヴァはびくりとする。


「じ、従者さま!」

「大人しくしてるように言っただろう!」

「だって、この子が…!」

「この子?なんのことだ?」

「ほら、ここに…えっ?」

 エヴァの前にいたはずの子供は消えていた。

「うそ、どうして」

「…ぼんやりして夢でも見てたんじゃないか」

「そんな…」


 そこへ、遅れてステファンがやって来た。

「どうなさいました、勇者様」

「いえ…何でも。少し勘違いなさったようです」

「あのっ!」

 エヴァはアーサーの言葉を遮る。


 アーサーが非難するような目を向けるが、構わず続けた。

「小さい子がいたんですけど…真っ白な肌に、銀髪で銀の目」

 しかし、ステファンは首をかしげる。

「確かにこの聖堂に身を寄せている村人はおりますが…そんな子供は…」

「そう、ですか…」


「ところで、もう夕方です。勇者様さえよろしければ今晩はこちらで休まれて下さい」

 ステファンが話を変えた。

 願ってもない申し出に、アーサーが謝意を述べる。


「外に討伐隊がいるのです。納屋でも貸して頂けると助かりますが」

「ああ、それでしたら大広間が空いておりますから」

「ありがとうございます。では、連れてきます」

「そうですな。…勇者様、お先に客室に案内しましょう」

 エヴァはステファンに促されて歩き出した。



 部屋はきちんと整えられていた。

 質素ではあるが居心地良さそうだ。

 ありがたいことである。

 ふと、さっきの子供のことを思い出した。

(なんだったんだろう…)

 何故か気になって仕方ない。

(何か言おうとしてたみたい)

 うーん、と考えこむ。

 そのとき、ドアがノックされた。

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