勇者様と従者さま。
 途端に、剣身から爆風が吹き出した。

 白銀の風が渦を巻く。

「呼んだな」

 どこからか、さっきのあの子供の声…シュリの声がする。

「ええ」

 エヴァはステファンを見据えたまま答えた。

「我を使うがよい」

 どこかおもしろがるような声音だった。

「魔を祓え、聖剣の勇者」

「…はい!」


 白銀が晴れた瞬間が勝負だった。

 ステファンが凶器と化した手を伸ばして来る。

 その左手に向かい、エヴァはただ、剣を突き出した。

 それだけで充分だった。

 剣先が触れた瞬間、そこを中心に白銀の光が爆発した。

 ステファンは光に包まれる。

 …それは、聖なる光。破魔の光だ。

「うっ…があああああぁぁ!」

 ステファンの苦悶の声が響いた。

 その体が崩れ落ちる。

 やがて、光が消えた。


 あとには司祭服の男性が倒れていた。

 正体をばらさないころのステファンそのものだ。

「…魔物に取り憑かれていたんですね」

「…もうずいぶんになる」

 エヴァの呟きに、シュリが答えた。

「あまりに魔物と同化していたからな、…助かるかどうか」

「そう、ですか…」

 エヴァは剣…聖剣を鞘に戻して俯く。


 まさにそのとき、扉が蹴破られてアーサーが飛び込んできた。


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