勇者様と従者さま。
 もう村には誰も残っていなかった。

 シュリは聖堂に保管されたまま時を過ごし続けた。

 先の見えない日が続いた。


 そして昨日、久々に外からやって来た人間たちがいた。

 そのなかに、シュリの好きな気配があった。好き、というより波長があう、といったほうが正確かもしれない。

 …あの人間ならシュリを使える。

 シュリは力を振り絞ってその人間…エヴァに近づいた。

 魔物に気づかれないようにするのは大変だったが、やはりエヴァはシュリを使える人間だった。

 こうしてシュリは久々に完全に覚醒した。



 …というわけで、我はエヴァをあるじと認めた」

 シュリはそう言葉を結んだ。

「…つまり何だ、あなたが伝説の聖剣で、こいつが聖剣の勇者だと?」

 アーサーが半信半疑といった様子で聞く。

「そうだ。…まあこの姿は我が思念が実体化したもので、本体はそこ、その剣だが」

 シュリがエヴァの持つ剣を示した。

「…魔物が人に取り憑く?そして俺達をあざむいていた?…そんな高度な知性を持った魔物なんて聞いたことがない」

「いや」

 シュリは否定した。

「我が生まれたころはそんな魔物が殆どだったぞ。…我が友が完膚なきまでに叩き潰したためしばらくは出てこれなかったのだろうが」

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