勇者様と従者さま。
「まあ、詳しいわね、アーサー=ゴールドスミス」

 ナナイはころころと笑っている。

「それは今あたしの管理下にあるの。意外に丈夫だから心配しないで頂戴。…使い方は、シュリはわかっているわね」

「懐かしい。我が生まれたころの品だからな」

 シュリが頷く。


「この鏡はどこにいてももう一枚の鏡とつながっているの。もう一枚はあたしが持っているわ。だから、この鏡を覗いてくれればいつでも話ができるのよ…あたしが眠ってるときじゃなければ」

「へええ!すごいですねえ!!」

 エヴァは本気で感心している。

「百聞は一見に如かず、よ。後で使ってみて」


 ナナイは微笑むと、姿勢を正した。

「さて、そろそろあたしは行くわあ。…勇者エヴァ。預言の巫女として旅の無事を祈っています」



 討伐隊員たちを加え、来たときよりさらに長くなった行列が村を去っていく。

「ご無事で!」

 エヴァとアーサーは隊員たちの別れに手をふって応えていた。

 短い間とはいえ仲間だったのだ。

 やはり寂しさはある。

 行列が小さな点にしか見えなくなって、手を下ろす。

「…俺達もそろそろ行こう」

 アーサーの提案に、エヴァは笑顔で頷く。

「はい。…ふたり旅ですね」

「我もいるぞ」

「あっ、ごめんなさい、シュリ」


 空は青く晴れ渡っていた。

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