勇者様と従者さま。
 しかしもう大丈夫。

 アーサーは自分の荷物の中の料理本を思った。

 村のおかみさんたちからも包丁の使い方を習ったのだ。

(シュリ…すまなかった)

 これからはまともな料理ができる。

 アーサーにはできる。

 彼はぐっと拳を握り締めた。



「そういえば、次はどっちに行けばいいんでしょう?」

 エヴァがいきなり荷物から鏡を引っ張り出した。

「ナナイ様!エヴァですー」

 はたから見れば、道のど真ん中で鏡に向かって話し掛けている痛々しい少女である。

 アーサーは慌ててエヴァを木陰に引っ張りこんだ。

「…賢明な判断だな」

 シュリも続く。


「あらあ、どうしたの?」

 鏡にはナナイの顔が映りこんでいる。

「次はどこ行ったらいいですかー?」

 ナナイは呆れ顔。

「そんなにはっきり未来は見えないわよう。そうね、確かその先に大きい街があった気がするのだけど」

「じゃあ、行ってみますね!」

「…あるじ、もう少し主体性を持つがよい」

 シュリが呟いた。アーサーも頷く。

 まったく、変な行動力はあるくせに…


「えー?あ、そうだ!ナナイ様、魔王ってどこにいるんですか?」

「それがわかればあたしだって苦労してないわあ!」

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