勇者様と従者さま。
「おおっまち!街ですー!」

 街が見えてくるとエヴァはやたらと上機嫌になった。

 人型のシュリと手を繋ぎぶんぶん振り回している。

「…あるじ、痛い」

「え?何か言いましたかシュリー?」

 シュリは引きずられて迷惑そうな表情をしているが。


「あ!そうだ!!」

 エヴァが急に立ち止まる。

 期待を込めた目でアーサーを振り返った。

 隣でシュリがつんのめって悲鳴をあげた。

「…どうした、エヴァ様」

 嫌な予感を覚えながらも、アーサーは仕方なく問いかける。

「えへへ、あのー、もしかしなくてもシュリとわたしって親子みたいに見えてたりとか!します?そうすると従者さまがお父さん役で!ほらほら、両側からシュリを挟んで歩きましょう!!」

 …アーサーは無言でデコピンを放った。

 いろいろつっこみどころはあるが、とりあえずいいとこ姉弟だろう。

 下手をするとシュリと同年齢くらいにしか見えない。

(…というか、本当に俺と同い年か?)

 アーサーは最近癖になってきたため息をついた。



 街は確かに大きかった。

 石畳の通りの両側には出店がずらりと並び、威勢のいい呼び込みの声が飛び交っている。

 整然とした王都とはまた違う栄え方だ。


 エヴァはしきりにあたりを見回しては歓声をあげた。

「うわあー!なんでしょうあれ!!」

「エヴァ様、急に走るんじゃない!」

「おいしい!あつ!おいひい!!」

「いつの間に買ったー!」

 まるきりはしゃぐ子供である。

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