勇者様と従者さま。
「…シュリ、戻っていていいぞ」

 エヴァよりさらに小さなシュリは人混みにのまれかけている。

 アーサーが気遣うとシュリは首を振った。

「あるじが話し掛けるやもしれんからな。戻ったらあるじが一人で会話する変質者になってしまう」

「そうだな…」

 アーサーはいたく同感して頷いた。

(まったく、エヴァ様には年相応の落ち着きというものが…)


「ひゃあっ」

「あぶない!」

 アーサーは咄嗟に手を伸ばした。

 エヴァが腕の中に倒れ込む。

 走ってきた誰かにぶつかられたらしい。


「あ…ありがとうございます」

「…大丈夫か」

 腕をつかんで助け起こしてやる。

 小柄だとは思っていたが、こうしてみると意外なほどに小さい。

 普段はやかましく動き回っているからだろうか。


「あるじ、気をつけろ」

「はい、シュリ…あの、従者さま?この手は?」

「エヴァ様を一人で歩かせると危ないから」

 片側にシュリ、反対側にアーサー。エヴァは真ん中。


「シュリがお母さんで従者さまがお父さんで…、わ、わたし子供扱いですかー!?」

 両側からため息の二重奏が聞こえてきた。

< 47 / 93 >

この作品をシェア

pagetop