勇者様と従者さま。
 通りをしばらく進むと広場に出た。

 広場はまた一段と混み合っていた。

「…何かあるのか?」

 アーサーは首を傾げる。

 それなりに身長があるアーサーでも前が見えない。


 突然、鐘の音が響く。

 その途端、わあっ…と、割れんばかりの歓声が轟いた。

 混乱する三人の上に、花が降ってきた。

 耳をすますと、人々が口々に叫ぶ言葉が聞き取れた。

 …結婚、おめでとうございます…

「結婚式だったんですね!」

 エヴァは微笑む。

 元来楽しいことが好きな彼女は、この空気だけで幸せになってくる。


「わたし、ちょっと行ってきます!」

 エヴァはアーサーとシュリの手を抜け出して人混みに駆け込む。

 あっという間に大騒ぎする群衆に同化して、祝福の言葉を叫びながら跳びはねはじめた。

「…」

 アーサーは苦笑して眺める。

「仕方ないあるじだ」

 シュリも半ば呆れつつ見守っていた。


 一瞬、人混みが割れて、エヴァにも歩いて来る花嫁が見えた。

 横顔しか見えなかったが、美しい娘だった。

 艶のある紅い髪と、やや勝ち気そうな顔立ちが、白い花嫁衣装によく映えていた。

(あれ…?でも…)

 エヴァは首を捻った。

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