勇者様と従者さま。
 エヴァが跳ねるのをやめてこちらに戻ってくる。

「楽しかったか?」

 アーサーは声をかける…が。

「…どうした」

 エヴァは浮かない顔をしていた。

「ええ、楽しかった…んですけど。お嫁さんが、なんだか辛そうな顔してて…」

 眉を寄せるエヴァ。

 彼女の知っている結婚式は、みんなが幸せそうな顔をしていて、その中で花嫁は誰よりも幸福そうに笑っているものだった。


「幸せな婚礼だけではないからな」

 シュリが呟いた。

 子供の姿には似合わぬ、経験のこもった言葉だった。

「そうでしょうか…」

「我らにどうできることでもあるまい」

「…はい」

 アーサーは肩を落とすエヴァの頭をぽんと軽く叩いた。



 夕暮れも近かったので、三人は宿を探した。

 大きな街だ。宿もたくさんある。

 すぐに、なかなかの宿を見つけることができた。

「ここでいいな?」

 アーサーが問うと、いつものようにエヴァのやたら元気のよい返事が…帰って来なかった。

 かわりに、震える声で、謝罪。

「…ごめんなさい」

「は?」


「お財布…なくしました」

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