勇者様と従者さま。
 …結局、三人はカレンに泊めてもらうことになった。

 宿はどこかと聞かれ、すられて野宿だと話すと、

「狭いけど、ここでよかったら」

 と、泊まっていくようすすめられたのだ。


「何から何まですみません」

 エヴァが謝ると、カレンは涙のあとが残る顔をほころばせた。

「いいんだよ。あたしも話聞いてもらえて嬉しかったし。…でもエヴァ、気をつけなよ?あんたぽわぽわしてるんだから」

「うう…はい」

 エヴァの背後ではアーサーとシュリが深く頷いていた。



「じゃあ、あんたたちはこっちの部屋を使ってね。エヴァはあたしの部屋でいいかい?」

「はい!」

 アーサーとシュリはカレンの父親の部屋に通された。

 カレンが狭さを詫びるが、シュリは人型をやめて引っ込めばいい話なので広さは何の問題もない。

 礼を言って中に入った。

 中は片付いていたが、時計台の職人らしく、その辺に部品や道具が置いてある。

 それらに触れないように気をつけながら、アーサーは荷をおろした。


「シュリ」

「…なんだ」

 シュリは座り込んで様々な形のネジを眺めていたが、呼ばれて視線をあげた。

 そうしているとただのあどけない子供のようだが、その銀の眼光は鋭い。

「…どう思う」

「おぬしはどうなのだ」

 問いかけに問いが返ってきた。

「どうも何も。俺の主人が信じると言っているからな」

 アーサーは肩をすくめる。

「…忠実なことだな」

「騎士の家に生まれた者にとっては最高の誉め言葉だ。…だいたいこの部屋の説明をどうつける」

「結論が出ているなら我に聞かずともよかろう」

 シュリが老成した仕草で鼻を鳴らした。

「わからないことがふたつある」


 長い話になりそうだ。

 アーサーは寝台の端に腰をおろした。

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