勇者様と従者さま。
 紅い髪、すらりとした体つき、きつめに整った顔。

 姿形はたしかにカレンだ。


 だが。


 その瞳は凶々しく煌めき、表情豊かだったはずの顔には、冷たい無表情が張り付いていた。


「…だれ、なの…」

 エヴァが呟く。


 『カレン』の目が動いた。

 エヴァをとらえる。

 口角が吊り上がった。


「…これが、勇者かしら」

 嘲りを含んだ口調だった。

 カレンのさばさばした語り口とは違い、絡み付くような話し方。

 『カレン』が視線を下げる。

 そこにいるのはシュリ。


「ずいぶん久しぶりですわね…聖剣シュリ、などと呼ばれているのでしたっけ?笑わせるわ」

 シュリは彼女を睨みつけた。

「ああ…久しいな、…<ハルジニア>」


 エヴァははっとした。

 それは、昨夜シュリが呟いた言葉…


「覚えていらしたのね…光栄だわ」

「…このような趣味の悪いことができるのはおぬしくらいであろう」

「…すべてはあの方の思し召しのとおり」

 『カレン』…否、<ハルジニア>は微笑む。

 背筋の凍るような笑顔だった。

 エヴァとアーサーは口を挟めず、固唾を飲んで見守る。


「あやつは…何を考えておる」

 シュリが押し殺したような声で問う。

 <ハルジニア>はまた、見下すように笑った。

 「…さあ?あたくしよりあなたのほうがよくご存知なのでは?あなたはあの方の…」



「黙れ!!」



 シュリが吠えた。

 ここまで激昂するのは珍しい。


「…あるじ!」

「はっはい!!」

 突然呼ばれてエヴァは背筋を伸ばす。

 その瞬間、シュリの姿が掻き消えた。

 聖剣が強く輝く。本体に戻ったのだ。


「祓え!」

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