勇者様と従者さま。
「っ…」

 アーサーは息を呑む。

 突然溢れ出たまばゆい光。

 ずっと暗闇に慣れていた目が眩んだ。

(…地下…だろう…っ?)

 不審を抱きながらも、なんとか目を開く。


 すっと誰かが寄ってきた。

 まだ焦点の合わない目でははっきり見えないが、色合いからしてエヴァのようだ。

「エヴァ様…どこに行ってたんだ。…エヴァ様?」

 彼女は黙ったままアーサーの手を握った。

 ひんやりした感触が伝わる。

 また、違和感のようなものを感じた。

 以前握ったエヴァの手はもっと暖かくなかったか?

 だが、強く手を引く力に抗えず、アーサーはずるずると部屋の奥へ導かれた。

 光が一層強くなる。

 そんな中ようやく目が慣れてきて、周囲がうっすら見え出した。

 地下と言っても、上部に明かり取りの小窓が開けてあるようだ。

 そこから入った光が、部屋の奥にある何かに強く反射しているようだ。

 エヴァは歩みを止めて、その光の源を指差す。

「…あれがどうしたんだ」

 言いつつ、エヴァに視線を移して――アーサーは戦慄した。

(エヴァ様の髪は…こんなに長くない…!)

 エヴァの髪は肩の上のはず。だが、同じ色合いの明るい茶髪は、どう見ても肩甲骨まである。

 先程感じた違和感はこれだったのだ。

 とっさに手を振りほどく。

「…誰だ?」

 アーサーの問いに、彼女は答えない。

 ただ、もう一度、光のほうを指差した。


 …そして、彼女は、

 霧が晴れるように、

 跡形もなく、消え失せた――。
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