勇者様と従者さま。
「というわけでだな…エヴァ様!」

 突然呼ばれてエヴァははっと目を覚ました。

 思い切り船を漕いでいたのだ。

「ごごごめんなさい!せっかく教えて下さってるのに!」

 わかりあえたと思ったのもつかの間、今度はアーサーによる勇者講義がはじまった。

 アーサーは勇者志望だっただけあって勇者に詳しい。

 …いささか詳しすぎた。

 その講義は建国の歴史にまで及び、懇切丁寧というに相応しかった。

 しかし鍛練で疲れきっているエヴァには子守歌以外の何物でもない。


「わかっているなら…」

「すみません!でももう大体わかりましたから!本当に!」

 エヴァはここぞとばかりに遠慮する。


 曰く、勇者は国の有事に選ばれる。

 希望の象徴として王族と同等以上に扱われるが、危険を省みず最前線で戦うことが求められる。

 国を護るという職務のため、騎士にとっては最高の栄誉である。

 どういう基準かは明らかでないが、勇者が必要になると神託が下りる。

 ちなみに、騎士以外の勇者は前代未聞である。

 今回の勇者指名は魔物が異常に増えているためだと思われる。

 そのため勇者エヴァは魔物の増える元凶…恐らく魔王を探し当て倒さなくてはならない。

 そもそもこのシステムのルーツは建国の時に活躍した勇者であり…


 と、このくらいまででエヴァは夢の世界に旅立ったためあとはわからない。

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