勇者様と従者さま。
あのとき。
幽霊屋敷で、アーサーがやっと戻ってきたとき。
アーサーの手にあったものを見て、ナナイは血相を変えた。
「…それを、王都に持ってきてくださる?」
普段の彼女らしからぬ緊迫した口調。
アーサーとエヴァは思わず顔を見合わせた。
ただシュリだけが黙っていたが。
かくして、勇者一行は馬車で王都へと急いでいるのである。
「それにしても、なんなんでしょうね、それ?」
それ、と称されたのは、アーサーがあの、幽霊の少女に渡されたものである。
黄金の剣身に、大小の宝玉をちりばめた、華美な拵え。
鞘や鍔に施された彫刻が優美な曲線を描く。
剣は剣だが、装飾剣といったほうが相応しい。
「確かにきれいですけど…何がなんでも急いで持っていかなきゃってものでもありませんよね?」
「ああ…俺もそう思う」
無造作に荷物に突っ込まれた宝剣を見つつ、アーサー。
「まさかこれも聖剣だったりとか!」
「…いや」
黙りこんでいたシュリが口を開いた。
そのまま何かいうかと思えば、また沈黙してしまう。
幽霊屋敷を出たときからずっとこんな調子だったのだ。
流石にエヴァも眉を寄せた。