シニユカバ・スーパーソニック
階下の居間から聞こえてくるTVのニュースが少しだけ怖い物に思えたのは、夢の中で聞こえていた呪文のようなメッセージがVTRから朗々と流れていたからだ。
気になった。何かを思い出さなければならない――そんな気はするけれど、その先には結局何も残らないように思えた。
彼女は枕元に置いてあった携帯電話を手に取った。多分彼はまだ寝ているだろう。でもとにかく話がしたい。話をしなければ、私が私である事を忘れてしまう気がするとさえも思った。
彼はまだ寝ているのか、なかなか電話を取ってくれない。コール音だけが耳に嫌らしく響き渡っていた。
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