シニユカバ・スーパーソニック
――失われた志は、そんな思いを巡り返し、今ここに蘇る。

流れているエルヴィスのメロディはこの無邪気で大人になり切れない若き男たちの気持ちを限界なく高ぶらせ、どこまでも盛り上げていく。短いスパンで耳に届けられる極上のメロディは、彼らにとっては実際どんな曲なのかもさっぱり分からないのだけど、聴いていて、自分の取るどの動作にも味が出た、なんて思わせてしまうところがエルヴィスの魅力であり、彼の歌がもたらす悪い悪戯だ。――やばいぞ、それは錯覚だ。エルヴィスのオーラは、未熟な彼らを簡単に自惚れさせる。おかげで、見えなかった希望が、こんな簡単に手に入った――そんな気にさせてしまった。
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