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「ああ。パパか…。」
「今日、出版社行ってきたんだ。」
パパは翻訳家で、ほとんど家で仕事をして
るから、外に出るのは珍しい。
「そうなんだ。」
エレベーターが止まった。
ちょうどあたしの家の階だ。
「そういえば、合宿あるんだって?」
「あ、うん。明日から。」
急な話だな、とパパは笑いながら言った。
「ただいま~。」
「おかえり!パパ、どうだった?仕事!」
ママがパパのカバンを受け取る。
なんか久しぶりに見る光景かも。
「別に普通だよ。
アメリカでも人気ある作品だから売れ
ないことはないと思う。」
「そっか。ご飯できてるよ~。」
ママに合宿の話をしようとしたけど、ママ
はリビングへと行ってしまった。
…ご飯中でいいか。
「今日はすき焼きにしてみたの!」
「豪華だ~。」
歩斗なら、肉だ~!って叫ぶんだろうな。
「愛華、歩斗呼べば?」
「え、でも…。
もうコンビニ弁当食べてると思うし。」
「いいから電話してみなさい!」
ママがあたしのケータイを持ってくる。
…ママ、ご飯中のケータイは禁止じゃな
かったっけ?
『…はい?』
歩斗の声だ。