enjoy!
 「愛華、遅かったじゃん?」

 「ごめんなさい!
  ちょっとカゴの取っ手が壊れてて!」

コートを見渡す限り、野中先輩はいない。

あたしは少し安心して、またラケットを握っ
た。

 「愛華、そーいえば歩斗知らない?」

 「え…?」

 「愛華が遅いから見てくるって言って…
  そのままなんだけど…。」

日花梨先輩はおかしいなという風に首をかし
げた。

 「…会ってないですけど…。」

 「そっか。
  でも、そのうち戻ってくるよね?」

あたしは作り笑顔でうなずいた。

…でも歩斗は何をしてるんだろ?

 「愛華、マジで歩斗に会ってないの?」

 「うん。」

…嘘なんかついちゃダメなのに。

あたし、なんか歩斗に期待しちゃってたりす
るんだよね。

もしかしたら、野中先輩に話しつけてきたり
とかしてくれるのかもって。

本当、バカみたいだ。
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