Love.Love.Loving!
「香彩ちゃん酷い…」
『え、あ、ち、違うの…っ!』
女の子に勝るぐらい大きなブラウンの瞳がうるうると悲しげに揺れる。
眉を八の字にして、傷ついたって言葉にしなくてもわかる表情をする希唯君に焦ったあたしの口は咄嗟にそう言っていた。
言った、それに。今から泣きます5秒前だった希唯君は「…なにが違うの?」ううう…。やっぱ聞いてくるうー…。
子犬みたいな潤んだ目で案の定食いついてきた希唯君に言っていいのか言わない方がいいのか。
ていうか、言いにくいよ…。
希唯君の手を振り払った理由――頬っぺたに手を添えようとした希唯君の行動が夢で見た〝あの人〟と同じで、希唯君と〝あの人〟が重なって見えて。
頬っぺたに手を添えたそのあとの行為も同じようにされるのかと思ったら、無意識に手を払ってしまっていた。
――なーんてこんな理由、希唯君に言えない。絶対黙秘で逃げるしかない。
『っごめん、ね』
希唯君の疑問符には答えずに謝るあたし。
今はもう希唯君の方に戻っている叩いた手を見たら、思いっきりやってしまったのか叩いたところが赤くなっていた。
そんなに強くやっちゃったんだ…と、罪悪感。
もう一度謝るあたしに希唯君は悲しげな表情をムッと不機嫌なものに変えた。