Love.Love.Loving!
凄みの利いたバリトン。
怒った…?怒った、よ、ね…?
本日三回目。ビクッと跳ねて、希唯君の腕を離そうと頑張る動きをぴたっと止めたあたしは、ほぼ初対面に近い希唯君となんでこんなことして、赤くなったり親しく(…っていうのも違う気がするけど)喋ったりしてるんだろう。
希唯君のパワー?魅力?…うん。そういうのが希唯君にはあるんだきっと。
それにまんまとはまっているあたしって単純だから?それとも希唯君の魅力が濃すぎる所為?
なーんて、希唯君が怒ったか怒ってないか気にしながら考えていたあたしは気づかなかった。
「――香彩ちゃん」
そう名前を呼ばれて、はっと顔を持ち上げれば、中庭が嫌でも目に入るはずなのに入らない。
目の前には白のワイシャツ。そこからつつつー…っと上に上がっていけば、ふわふわのココア色を風で靡かせる希唯君。
え?え?と、状況が飲み込めないあたしはキョロキョロと辺りを見渡した。
場所とかは変わらない。変わったのは、あたしの身体の向き。
希唯君に背中を向けていたあたしの身体は、今度は中庭に背中を向けていた。