Love.Love.Loving!

「ダメ」


一言そう言って、今度は痛みを感じるぐらい指に歯を当ててくる。

それにビクンッ、と反応して、眉を顰めて開いてしまった瞳に映ったのは、大人っぽく妖艶に、歳に似合わない意地悪な笑みを浮かべた希唯君。


ああ、もう、死んだと思った。

その表情がかっこいい、もあるんだけど、色気や妖艶さが合わさって――綺麗。その言葉がぴったりな表情。

〝あの人〟とはまた違った――希唯君と〝あの人〟は歳が違うけど――見せられた大人の表情に意識が飛んでいきそうになった。


そんな表情で、しかも甘ったるいバリトンで希唯君は、

「香彩」

あたしの名前を呼び捨てで呼ぶ。


これ以上熱が上がったらまた気分が悪くなって意識が途切れてしまうかもしれないのに、希唯君の所為で熱は上がる一方。


頬っぺたに伝う涙が蒸発してしまうんじゃないかってぐらい熱い顔に、未だに貼り付けたままの自分の右手。

それを希唯君は空いている方の手で優しく退かして、代わりに自分のをそこにぴたりと添える。

それから大人な表情を一瞬でまた違った、こっちの方が希唯君らしいなっていう表情に変えて。

きゅっと細くなる目。まるで大事なものを――宝物を見るような瞳であたしを見つめてふわり、微笑む。


と。

「好き」


だなんて――、これじゃあまるで〝正夢〟みたいじゃないか。
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