Love.Love.Loving!
『希唯君近い…っ』
「大丈夫。近いの俺、好き」
『な、なに言ってっ、――!!』
ぷちゅっと頬っぺたに押しつけられた〝柔らかいもの〟にあたしはビクッと身体を後ろに引いて希唯君と距離をあける。
本心では二メートルぐらいあけたいんだけど、でもあたしは椅子の上。距離をあけたといっても然程――ていうか20センチほど離れたぐらいで。
背中が背もたれにぶつかってギィッと鳴いた椅子を恨めしく思いながら、目の前の希唯君をなにすんだと真っ赤な顔で見る。
相変わらず満足げで楽しそうなゆるーい表情の希唯君が、表情だけだったら!可愛いんだけど、なぜかそれも今は天使の裏側を見てる気分。
もしかしたらなにも企んでないのかもしれないけど、前科がある。
可愛い表情にころっと騙されてはいけないのだ。次はなにされるかわからない。
「香彩ちゃんの恥ずかしがりや~。ほっぺにチュッてしただけなのに」
『そ、それだけでも恥ずかしいもんっ』
「さっきまでよだれまみれの超濃ゆ~いベロチューしてたのに?」
『っ!!』
な、なななな…!?
今のあたし、絶句。なんてことを言うんだ、このデリカシーなさすぎエセ王子めっ!さいっあくで最低だ希唯君のバッカ!!
不思議そうな表情をして言う希唯君の口元はそれとは裏腹に悪戯に上がっている。
そのなんともわざとらしい表情にムカッとくるけど、言われたことは否定しようがない事実だからぶわわわっと顔とは言わず身体中が一気に熱くなって怒るどころじゃない。
マジで、本当に。
希唯君のバカッ…!!