Love.Love.Loving!
『…バカ野郎』
あたしを遅刻させた希唯君に対して。変態な奏君に対して。一番は本当におバカな自分自身に対して。
零した愚痴はさわさわとぬるい夏風に揺れる桜の木の音に混じって消えた。
英語のプリントを見れば憂鬱。でもやるしか選択はなくて。
残りの昼休みの時間、することもないし頑張ってみようかと、ベンチから立ち上がる準備をしようとお弁当箱を太股の上から退かそうとしたら、
「…香彩ちゃん」
『え?』
下を向いていた顔を呼ばれたから持ち上げる。
〝香彩ちゃん〟ってあたしを呼ぶ男の子は知り合いでいるけど、今頭の中に浮かんだのは希唯君だけ。
あたしを呼んだ声も希唯君のもの。あたしの前に立っていた人物も希唯君。ココア色のふわふわの髪が夏風に揺れる。
『な、なぁに?』
ほんの2時間ちょっと前の出来事で気まずいな、と思うあたし。それはたぶん表情にも、セリフにも露わになってしまった。
感じ悪かったかも…。
慌ててへらっと笑って誤魔化す。『どうしたの?』聞いたあたしに希唯君は距離を埋めてきた。