Love.Love.Loving!
席に着いてからも、マサ君がいろいろと話しているのを聞いているふりして聞かずにタメ息。
と、続けて二回もタメ息を吐いたから幸せは逃げて、不幸がこんにちはと訪れた。
「須王香彩は宮先生んとこに今すぐ行くように。なんか1分で来なかったら課題増やすだって。なにしたのー?」
マサ君のセリフに顔を上げる。
こてん、と不思議そうに首を傾げるマサ君を見つめることチ、チ、チ。はっとして慌てて鞄のチャックを開けた。
『(ああああ。やってないぃー…)』
クリアファイルから取り出したプリント2枚。昨日の遅刻したペナルティーである英語のプリント。
希唯君にファーストキスを奪われたショックが大きすぎるぐらい大きくて、存在すら忘れていた。
どうしよう、なんて考えている暇はない。マサ君は言った。1分で来なかったら課題増やすだってって。…ありえない!
あまりにも短すぎる制限時間にあたしは無理とか最悪だとか希唯君のバカー!とか、また希唯君の所為にして(だけど事実)、席を立つと教室を飛び出した。
これほどまでに廊下側の一番後ろの席でよかったと思ったことはなかった。