愛のカタチ


少しの沈黙の後に甘ったるい声が聞こえた。

「俺はちょっと寂しい、かな。」

「!!」

本当に!?

「な…に言ってるんですか??」

鼓動が、早くなる。

「えっ、美波は寂しくないの?」

「………。」

寂しいはずは、ない。

だって、そんな関係じゃない。

一緒に居られなくて寂しいと思うのは、恋人達だけでしょう。

今週は忙しいからちょっと時間が取れないよ、と瀬戸さんは言う。

いいのに。

お互いに人恋しい時だけに会えたら。

それでいいのに。

特別な感情なんてないのに、お互いの為にわざわざ時間を作る必要なんてないのに。

切れた携帯を握ったまま、短い溜め息をついた。

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