愛のカタチ


「美波は寛志しか見てなったからなぁ。」

少し寂しい横顔。

はっ、と目を反らしビールを飲み干す。

急に何を言い出すのだろう…。

私は話題を変え、気持ちも切り替えた。



送ってくれるという野口先輩の車に乗り込み、カメラの器材が詰め込まれたその車は静かに走り出す。

「今日は楽しかったよ。」

「私もです。」

野口先輩はご機嫌に鼻歌を歌いながら運転する。

「でも本当に…凄い偶然、っていうのかな?
また美波に会えて嬉しかったよ。
あの時忘れ物をした林さんに感謝、かな。」

「ふふっ。」

野口先輩と再会した日の、林さんの驚きようを思い出し笑ってしまった。

私達が知り合いと知って、一番驚いていたのは彼だったに違いない。

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