あいつが死んだ……
父―靖
なぜこんな事になったのだろうか。
私は真っ黒いスーツを着こなして、参列者と一緒に正座をしながら考えていた。
これは、何かの悪い夢だ。
心の中で何度もそう思おうとしたが、すぐそこの棺桶から見えるのは、変わり果てた姿になってしまった我が息子の顔。
息子は高校三年生。本当ならば今頃学校へ行って、楽しく友達と遊んだり、得意気にシャーペンを使って勉強をしていたんだろう。
だが、棺桶に入った息子はピクリとも動かないし、顔には生気が無く少し紫色に染まっている。そんな行動を今から始めるとは思えなかった。
もしも願いが叶うならば、こんな状態でも良いから起き上がってもう一度笑顔を見せてくれたのなら、と思う。
だが、もちろんそんな私の願いが叶うはずも無く、坊主の上げる意味の分からないお経だけが、私の耳に聞こえて来るのだった。