あいつが死んだ……

母―直子


― ― ― ― ― ― ― ― 


 夫の靖が、遺族代表の挨拶を参列者の皆さんに語っている。

涙声で、時々我慢出来なくなって「うぅっー」と声を洩らしたりもしていて、何を言っているのか判別出来ない時もある。

 参列者の皆さんはそれを見て、夫の涙に釣られたように泣き崩れたり、声を洩らしたりと、皆悲痛そうな面持ちで俯いている。


 今日の主役は私の息子、徹。

 さっきまでお経を唱えていた坊主のすぐ側の棺桶には、息子の変わり果てた姿がある。

ここからでは見えないけど、私はその姿を何回か見た。

 その姿はまさしく「死体」であって、いつも元気だった徹の見る陰はないけど、間違いなくそれは見慣れた徹の顔だった。

その憐れな顔を思い出すだけで、私の目にはいつの間にか涙が浮かんで来て、「どうして? どうして?」と激しい感情が浮かんで来てしまうのだった。


< 11 / 31 >

この作品をシェア

pagetop