あいつが死んだ……
夫が涙ながらに、必死で何かを言うのを続けている。
あの仕事人間の夫がこんなにも感情を表わにしたのは初めての気がする。でも、それも無理のない事だと思う。
徹は夫にとって、いや私達夫婦にとって自慢の息子であり、最高の宝物だったのだから。
徹がミュージシャンになりたいと言い出して、夫が反対したのは知っている。
その事で夫が責任を感じているらしい事も知っている。だけど、私には夫が直接の原因ではないような気がしてならない。
夫の言い分は私も正しいと思っていた。私も息子にあんな打ち明け話をさせられていたら、きっと反対した事だろう。
それだけじゃなく、それぐらいの事で息子が自殺するなんて私にはどうも思えないのだ。
もしかしたら、責任は私にこそあるかもしれない。
その考えが、私の頭の中から離れないのだ。