あいつが死んだ……


 命名 「徹」

 夫が必死で考えて付けた名前だった。

自分の道を真っ直ぐに突き進んで欲しい。強い意志を持って欲しいと言う意味らしい。

何だかその真っ直ぐさが夫らしくて、私はもちろんオッケーした。


 育児は比較的、楽だったように思う。

夜泣きとかがあんまりなくて手のかからない子だった。育児仲間の人達の話を聞いたりすると、本当に私は恵まれてたんだなぁ、と思う。

手のかからないと言っても、それは世間一般の人に比べてであって、育児なんかした事がない私にとってはけっこう大変な仕事だった。

 夜はすやすや静かに眠ってくれて楽だったけど、昼間は暴れ回っていた。

元気だけは人一倍あるらしく、目を離した隙に姿が見えなくなってしまう事もしばしば。

私はその度に、地球がひっくり返るような衝撃に見舞われねばならなかった。

 育児も、徹が幼稚園に入る事である程度の落ち着きを迎えた。

この頃の徹は、夫と遊びに行く事が大好きで、いつも日曜日には夫を引き連れてよく外に遊びに行っていた。

徹がとっても楽しそうな顔をしているから、私も嬉しかったけど、徹が夫に取られたような気がして、少し悔しかった。

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