あいつが死んだ……

 徹はすくすくと健康に育っていった。

 大きな病気もなく、よく家に来るケンちゃんや茜ちゃんを主に、友達もいっぱいいるみたいで、いつも屈託のない笑顔を見せてくれていた。


 徹が小学校に上がった時だろうか。夫が昇進を果たして仕事が忙しくなり、家にいられる時間が少なくなった。

徹も、夫がいない現状にしばらく慣れる事が出来ず、よく「お父さんは? お父さんは?」と駄々をこねていた。

私も夫の代わりに何回も遊んだりしてあげたものだが、次第に体力の付いてくる徹と遊ぶ事にくたびれてしまった。

 徹もそれを察して、子供ながらに気を使ってくれたのか、私とはあんまり遊ばずに友達を遊びに誘いに出掛けるようになった。

 幸い、徹には友達がいっぱいいたので、遊び相手には事かかなかった。

誰にでも優しく、活発だった徹はみんなの人気者だった。

成績や素行も至って優秀で、私は何だか誇らしくて、近所のスーパーに買い物に行く時なんかは胸を張って歩いたものだ。


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