あいつが死んだ……

 徹が小学校に入った頃だろうか。私は、真面目な仕事ぶりが認められたらしく、管理役に昇進を果たした。

家では、妻の直子を筆頭に息子の徹も満面の笑顔を浮かべて私を祝福してくれた。

 私は家族の祝福に浮かれ気分になっていて、昇進が何を意味するのかを忘れていた。


 それから、私の人生の中心は仕事一色になっていた。

部下の尻拭いで残業したり、また上の連中との付き合いなどで、私は家にいる事が少なくなっていた。

 たまの休みが取れた時でも、私は疲れ果てて寝ている事が多く、徹は不満気な顔で私を遊びに連れて行くのを諦めるのであった。


< 4 / 31 >

この作品をシェア

pagetop