あいつが死んだ……

 家庭内の事は妻に任せっきりになっていた。

徹は友達も多いし遊び相手にも事欠かないから、私がいなくても大丈夫だろうと私は勝手にそう思っていた。

 そう思って仕事に没頭していたら、妻に泣き付かれた事があった。

「父親にしか出来ない事だってあるんです!」

 妻の言葉は私の脳裏にひどく突き刺さった。

 私のしている事は間違っているのだろうか。

私は何度となくその不安に苛まれた。

 このままではいけない。

 そう考えた私は、初めての有給休暇を取って家族旅行に行く事を提案した。

会社側は、私の真面目な仕事ぶりを評価してくれて、比較的忙しくない時期を見計らって、休暇を取る事にゴーサインを出してくれた。

 私は早速、家族三人でオーストラリア旅行に行った。

< 5 / 31 >

この作品をシェア

pagetop