あいつが死んだ……
家庭内の事は妻に任せっきりになっていた。
徹は友達も多いし遊び相手にも事欠かないから、私がいなくても大丈夫だろうと私は勝手にそう思っていた。
そう思って仕事に没頭していたら、妻に泣き付かれた事があった。
「父親にしか出来ない事だってあるんです!」
妻の言葉は私の脳裏にひどく突き刺さった。
私のしている事は間違っているのだろうか。
私は何度となくその不安に苛まれた。
このままではいけない。
そう考えた私は、初めての有給休暇を取って家族旅行に行く事を提案した。
会社側は、私の真面目な仕事ぶりを評価してくれて、比較的忙しくない時期を見計らって、休暇を取る事にゴーサインを出してくれた。
私は早速、家族三人でオーストラリア旅行に行った。