ホワイト・メモリー
プロジェクト間のトレードは、社内でちょっとした話題になる。まして肩書の異なる人間同士のトレードの場合はなおさらだ。功の肩書はジュニアコンサルタントで、雄一の肩書はプロジェクトリーダーである。実際には、トレードの背景には様々な理由があるのだが、第三者の目は冷ややかなものだ。トレードされた二人は同等であると見られてしまうのである。つまり、プロジェクトリーダーの雄一は、そのプライドを傷つけられる。一方で功の株は上がる。
トレードされた人間は、早急に新しいプロジェクトの環境に慣れなくてはならない。プロジェクトの概要や体制、作業スケジュールなどはもちろんのこと、クライアント独自の言葉や社風、禁句事項、それと些細なことではあるが、昼食を取る場所やクライアントが良く行く飲み屋なども知っておかないと、ふとした時に困るものだ。
というのは、仕事には愚痴がつきものであるから、そういうことをクライアントの耳に入れてしまっては信用がガタ落ちなのである。クライアントのいない場所で食事をとる。これはコンサルタントの鉄則である。
とは言っても、功は過去に三ツ星工業での経験がある。三ツ星工業についての基礎知識は、既存のメンバーよりも知っているくらいだ。トレードによって株はあがるし、経験のある場所での仕事というのは準備の手間が省ける。そして何よりも塚越と相性が良いというのは、かなりのプラスだ。基本的にクライアントのいる場所で愚痴など言ってはいけないのだが、塚越本人がそういう愚痴を聞きたがる性格だった。無礼講の飲み会などでは、欠席裁判などと称して会話がはずむ。
「露出が多くなってきて、ええ季節やないか?」
「そうですね。特に中島さんのファッションには目のやり場に困ります」
酒の勢いもあって、功は冗談まじりに言った。中島というのは、クライアントの経理部の女性社員である。いい歳をして、露出が多く、お世辞にもスタイルが良いとは言えないのだが、いつもぴちっとした肌に張り付くような服を着ているのだ。
「お、それは困るな。厳しく言っとかな。『あなたの服装は仕事になりませんので、厚着をするなり、ジムに通うなり、ちょっと努力が足りんのとちゃいますか?』ってのはどないや」
酒を飲み、げらげら笑い、こんなに楽しい仕事があっていいのかと功は思った。
トレードされた人間は、早急に新しいプロジェクトの環境に慣れなくてはならない。プロジェクトの概要や体制、作業スケジュールなどはもちろんのこと、クライアント独自の言葉や社風、禁句事項、それと些細なことではあるが、昼食を取る場所やクライアントが良く行く飲み屋なども知っておかないと、ふとした時に困るものだ。
というのは、仕事には愚痴がつきものであるから、そういうことをクライアントの耳に入れてしまっては信用がガタ落ちなのである。クライアントのいない場所で食事をとる。これはコンサルタントの鉄則である。
とは言っても、功は過去に三ツ星工業での経験がある。三ツ星工業についての基礎知識は、既存のメンバーよりも知っているくらいだ。トレードによって株はあがるし、経験のある場所での仕事というのは準備の手間が省ける。そして何よりも塚越と相性が良いというのは、かなりのプラスだ。基本的にクライアントのいる場所で愚痴など言ってはいけないのだが、塚越本人がそういう愚痴を聞きたがる性格だった。無礼講の飲み会などでは、欠席裁判などと称して会話がはずむ。
「露出が多くなってきて、ええ季節やないか?」
「そうですね。特に中島さんのファッションには目のやり場に困ります」
酒の勢いもあって、功は冗談まじりに言った。中島というのは、クライアントの経理部の女性社員である。いい歳をして、露出が多く、お世辞にもスタイルが良いとは言えないのだが、いつもぴちっとした肌に張り付くような服を着ているのだ。
「お、それは困るな。厳しく言っとかな。『あなたの服装は仕事になりませんので、厚着をするなり、ジムに通うなり、ちょっと努力が足りんのとちゃいますか?』ってのはどないや」
酒を飲み、げらげら笑い、こんなに楽しい仕事があっていいのかと功は思った。