ホワイト・メモリー
功は塚越の話を聞いているうちにオーバーヒートした心に冷静さが戻ってくるのを感じた。
今自分は青田物産で起こっている問題に飛び込もうとしている。なぜならば、自分には問題を解決できる可能性があるからだ。おそらく青田物産のプロジェクトメンバーは問題の解決方法を知らない。というより、問題を解決する方法ではなく、解決せずに済ませる方法を考えているだろう。そんなことになれば、困るのはクライアントであり、延いては我々自身だ。それを知ってしまった今、見て見ぬ振りをするわけにはいかない。それは功のポリシーに反するからだ。
しかし、実際問題、どうすればいいのだ?当然、部外者の功が突然青田物産に乗り込めば、別の混乱を招くに違いない。そもそも、このメールが功に届いていることを誰も知らないだろう。メールさえ読まなければ、こんなことで頭を悩ませることもなかったのだ。メールのCCに自分の名前が入っていなければ、オートコンプリート機能なんてものがなければと思わずにはいられないのだった。
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