ホワイト・メモリー
功には入社当時からそういう部分があった。
新入社員研修のケーススタディにおいて、同期の加藤のプレゼン内容を功は激しく批判した。それは企業の内部統制のあり方について、さまざまな場面を想定し、それらについて意見を述べるというものだった。

「設問にある会社Aの決算整理前残高試算表をみると現金過不足の金額が比較的多額であることが分かります。したがって、経理財務部の残高照合の業務プロセスを見直すとともに、担当者のスキルアップや責任感を持たせるための教育活動が必要だと考えます」

加藤は慶応大学出身で会計にはめっぽう強かった。この数週間の研修においても、上司から熱い視線を受けていることは誰の目からも明らかだった。
「加藤は別格だよ」「敵には回したくないね」他の新入社員は口々にそう言った。加藤はもはやライバルではなく、尊敬できる存在と化していたのだ。
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