ホワイト・メモリー
しかし、功は加藤の完璧ではない部分をいくつも知っていた。まだ入社して間もない研修期間中に同期との関係を悪化させたくないと功は思っていたので、あえて今まで黙って来たのだ。
功は早稲田大学出身で、やはり会計は得意であった。早慶戦の血が騒いだのかと言われれば、必ずしも否定はしない。研修の講師を努める主任の田中までもが加藤の意見に感心した表情を示していることがさらに腹立たしく思えて、とうとう我慢の限界に達した。
自分の意思よりも先に、功の右手が挙がった。
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